どうもマスコミは本気でセクハラ野次問題に取り組む気があるのかどうか非常に疑わしいです。
各社が報じるところによると、4月の総務委員会で日本維新の会・上西小百合議員が人口減少問題について質問中、男性議員から「早く結婚して子どもを産まないとダメだぞ」との野次があり、さらに議場からは複数の拍手があったとのことです。上西議員は自民党の議員を名指しで批判しているそうですが本人は否定しているとのこと。ありえない異常事態ですがそれが常態化しているのが議会。こんなことはしょっちゅうある話です。
衆院総務委員会で女性議員にやじ(NHKニュース)
このニュースの元になったのはどうやらこちらのアンケート調査(常態化する「女のくせに」。女性議員から男性議員へのハラスメントも 週刊チキーーダ!(飯田泰之&荻上チキ)緊急調査 vol.2)のようなのですが、なぜ上西議員の受けたセクハラだけが今回ニュースとしてクローズアップされているのか非常に疑念を感じざるを得ません。とくに塩村都議の受けた野次問題が次第に塩村氏自身の選挙以前のプロフィールに関するゴシップに報道がシフト状況下で、僕は議会野次や議会のマチズムを指摘する例としてあまり適切だとは思いません。
塩村氏の受けたセクハラ野次の問題が報道されるようになって以降、いままでも複数の地方議会議員や国会議員が、いままでもこうした野次があったこと、場合によっては状態化してきたことを証言しています。
そうした中で、「ここでひるんではかえって女性議員が舐められる状況を再生産する」と、セクハラに果敢に立ち向かってきた女性議員も多数います。
(以前の記事でも西東京市の納田さおり議員のFacebookのコメントを引用しました。
「ヤジられることに馴れきってしまった私には庇ってもらえて良いですねとしか思えませんでした。
ちなみに私だったら「子どもがいないから出産や子育て支援の質問をしてはいけないのですか?子どもがいないからこそ、客観的に見れるものもあるのでは?ではご自分でも子どもを育てた事がおありになるの?」と怒鳴り返してしてしまうだろうなとf(^_^;)...
女性だからこそ、燐とした対応の見せ処では。
もちろんヤジの内容は酷いですが、可愛そうに甘えてしまっては、女性議員の立場が舐められます。 」)
それに対して今回の塩村都議、上西代議士ともに野次に苦笑してしまっているのです。あろうことか、上西氏に至っては「がんばります!」などと応じている。これでは野次を飛ばしたほうも、見ていたほうもこの野次が上西氏への激励になった=プラスに作用したと判断してもおかしくありません。こうした「相手も喜んでるんだからいいじゃないか」という勘違いがさらなるセクハラを誘発する事態をみなさんお酒の席でもよく見てきたはずです。塩村氏の反応も上西氏の反応も、セクハラ野次を横行させる土壌を容認しかねないという意味で同僚や後世の女性議員にとってあまりいい影響を残すとは思えないのです。
上西氏は「やじに拍手喝采する議員の多さにがくぜんとした」と述べ、「議論するのが仕事と自任しているので、軽くいなして先に進むしかなかった」と当時を振り返った。
さて、この上西小百合氏、塩村氏とおなじく「維新政治塾」の元受講生で、12年の衆院選で日本維新の会の公認候補として大阪7区(摂津市・吹田市)から出馬し、選挙区では自民党元職のとかしきなおみ氏には敗れたものの、民主党の藤村修官房長官(当時)を下し選挙区得票率で二位につけ、維新旋風を受けて比例で当選しています。9月に分党予定の維新の会の中では松野頼久氏が暫定代表を務める所謂橋下グループに参加意向です。学生時代に天神祭「ギャルみこし」などのキャンペーンガールを務めた経験もあり、衆院選では陣営のスタッフが有権者の買収行為で公職選挙法違反で大阪府警に逮捕されるなどしており、つまり、週刊誌のゴシップネタをたくさん提供してきた経緯があるひとなのです。
上西小百合 他3名 運動員が公選法違反で逮捕!これぞ維新クオリティ
繰り返して言うようですが、私はセクハラ野次を受けた側の議員の資質を問う議論が、野次を正当化する理由には全くならないと思っています。加えて、議員になる以前の過去で人物の資質を問うのならばそれは選挙のときに議論するべきです。議員になってからの実績を全く精査せずに議員としての資質を問うこと自体も奇妙な話だと思っています。
もし、この上西議員の過去をして「こういうヤツが女の代表みたいな顔してるからセクハラがなくならないんだよ」というような意見があるならそれは言語道断です。セクハラや他人の尊厳を傷つけるような野次の問題はずっと存在してきた問題であり、それが議会政治に関心が強い一部の層以外にとっては表面化してこなかっただけの話なのです。ですから、逆にこのような脇道にそれた議論に足を引っ張られて議会の改革が進まないのならば、議員の意識改革が進まないのならば、それは最初から他人の尊厳を傷つけるような野次の撲滅に対して本気じゃないということです。
にもかかわらず、今回の報道では必ず上西議員の人物にスポットがあてられることは明白です。塩村議員をめぐる報道が当初は「女性の人権を踏みにじるもの」などと言われながらだんだんと塩村氏自身のゴシップを探す報道にシフトし「なんだ~、どっちもどっちなのね~」という意見に世論をミスリードしていったように、今回上西氏に対する野次が大きく報道されたことは最初からそうした方向に結論を導くべくしてメディアが叩きやすいひとを担ぎ出してきたとしか思えないのです。
彼女たちがなぜ少子化問題・子育て支援の問題を取り上げるか。(すべての議題について言えることですが、)先輩ベテラン議員たちが繰り返し取り組んできたにも関わらず遅々として対策が進まない分野であるからです。だから、このような問題に足をとられているまに、さっさと実効性のある少子化対策・女性の職場環境向上やセクハラ撲滅に対する対策を打ち出していってほしいと切に願います。
追記(2014年7月4日20時頃);上西議員に不適切な発言をしたとして自民党の大西英男衆議院議員(東京16区=江戸川区選出)が名乗り出、電話で上西議員に直接謝罪したことを明らかにしました。自民党は都議会のセクハラ野次問題に続きこの問題でも閣僚や党幹部らが記者会見で痛烈に批判、早期の幕引きを図っています。党内からは党内体質の改善を望む声も上がっていて、これはいい兆候です。決して当人同士の個人的問題に収束させてはいけません。
野田聖子総務会長は4日、取材に対し「そういう(セクハラに鈍い)土壌がある政党なので懸念していた。社会の鉄ついを食らって、古い自民党を変えてほしい」と語った。
(時事ドットコム:自民、早期収拾に懸命=政権へのダメージ懸念-セクハラやじ問題)
自民党の平将明衆議院議員は自身のFacebookで3年前の2011年に行った超党派国会改革勉強会で提出した提言内容を紹介しました。
当時はねじれ国会が常態化し、国会が機能不全に陥って国民の政治不信・国会不信が非常に高まっていました。
そのなかでまとめられた提言の中に、議員個人に判断を委ねる「党議拘束の緩和」や「質問要旨の事前通告義務化」のほか、「質疑における暴言や野次の一掃」というのがありました。
2、審議における「暴言」「ヤジ」の一掃、品位ある国会へ
国会において国民の信頼を最も失っている行為の一つが質疑における「暴言」と議員の「ヤジ」である。私たちは「品位ある国会」を目指し、人格攻撃や誹謗中傷はもちろん、本会議を含めた限度を越えたヤジの一掃のため、議長あるいは委員長による議事整理の権限が適切に行使されるよう求める。また「品位ある言動」に賛同する議員の署名を募りたい。
この提言をまとめた当時の「超党派国会改革勉強会」に集まったのは、以下の4党17名、もとはねじれ国会がはじまった2007年を契機にしてはじまった自民・民主の8衆議院議員の勉強会で、同じメンバーで中央公論に論文を掲載。2010年末から拡大したそうです。
自民党: 河野太郎、平将明、柴山昌彦、古川俊治、福岡資麿
民主党: 馬渕澄夫、泉健太、津村啓介、長島昭久、舟山康江(みどりの風に移籍後2013年参院選で惜敗)、吉川沙織
公明党: 遠山清彦、谷合正明
みんなの党:水野賢一、山内康一、桜内文城(日本維新の会に移籍後参院選に鞍替え出馬し当選)
衆参両院の議長や委員会長、各党の国会対策役員を回り、申し入れを行いましたが、一定の評価を得たものの採択には至らず、その後勉強会の活動も収束していったようです。
国会改革提言で河野氏ら超党派国会改革勉強会が参院議長に申し入れ
その後自民党青年局など、各党の内部で国会改革に関する取組や勉強会が進められてきました。今年5月には首相の委員会出席軽減や党首討論の月例化、政府質問の事前通告の前倒しを軸とした国会改革案が自民・公明・民主・維新の4党の合意により可決しましたが、その他の部分については各党の意見の隔たりがあり、議論が平行線となっていました。
いまいちど、国会対策を見直す時期に来ている段階です。平議員は今回この勉強会を再結集・再始動することを表明しました。
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